【実務ガイド】台湾の企業が従業員を全民健康保険(健保)に加入させるための手順を紹介

台湾で会社を設立し従業員を雇用する場合、全民健康保険(以下、健保)への加入義務が生じます。
台湾でのビジネスを考えている方の中には、健保の団体加入資格や、加入時に必要な手続きについて知りたい方も多いはずです。そこで、この記事では台湾で現地法人を設立した後、従業員を健保に加入させるための手順を紹介します。
法人企業は従業員を社会保険に加入させなければならない

法人企業は従業員を社会保険に加入させる義務があります。
台湾の主な社会保険は、以下の3つです。
| 保険の名称 | 内容 | 保険料の負担割合 |
|---|---|---|
| 全民健康保険 | ・日本の国民健康保険に近い医療保険制度 ・原則として全国民が加入対象 ・資格を満たした外国人も加入できる | ・会社負担60%、従業員負担30%、政府補助10% |
| 労工保険 | ・日本の労災保険・雇用保険・厚生年金の一部に近い制度 ・業務上・業務外の傷病、障害、老齢、死亡などに対する給付制度 | ・会社負担70%、従業員負担20%、政府補助10% |
| 労工退休金 | ・日本の確定拠出年金に近い制度 | ・会社は毎月従業員の月給6%以上の額を従業員の個人の退休金口座に積み立てる義務がある ・従業員が任意で6%以上の額を上乗せすることも可能 |
※引用元:労働部労工保険局
従業員を全民健康保険に加入させる手順

台湾の日系企業が従業員を健保に加入させる際に必要な実務は以下の通りです。
全民健康保険に加入させる実務手順
それぞれの実務について具体的な内容を説明します。
1.会社が全民健康保険の団体加入資格を整える
健保と労工保険の保険加入事業所(投保単位)の登録は、実務上は「勞保・健保・勞退」を同時に申請するのが一般的です。
申請書は労働部労工保険局の公式HPから入手できます。
保険加入団体として登録するための手続きは以下の通りです。
- 衛生福利部中央健康保険署の各地分署に会社を保険加入団体(投保単位)として登録
- その際に保険料の徴収・納付方法も登録
以下は、登録の際に必要な主な書類です。
- 会社登記簿
- 統一編號(台湾の法人番号)
- 代表者の身分証明証
- 会社印鑑
- 銀行口座情報
- 申請書
2.対象となる従業員から必要情報・書類を収集する

会社が健保の加入団体として登録されたなら、従業員を加入させるためのステップを踏みます。
健保の加入対象となる従業員は以下の通りです。
- 雇用関係がある従業員
- 労働時間や給与水準などの一定条件を満たした契約社員・パート・アルバイト社員
- 台湾人・外国人を問わず、法令上の加入条件を満たす従業員は原則として加入対象
日本人を含む外国人の従業員が、健保の加入者になる場合、居留証(ARC)の取得が重要です。
台湾人・外国人従業員それぞれ必要な書類・情報は以下の通りです。
| 従業員種別 | 必要書類・情報 |
|---|---|
| 台湾人従業員 | ・身分証(身分証番号) ・住所 ・既に健保カードを取得しているかどうか (転職の場合は、既存のカードを継続利用) |
| 外国人従業員 | ・パスポート ・居留証(ARC)に記載されている番号・有効期限・ ・居留証(ARC)のコピー ・住所 ・連絡先 |
3.従業員ごとの加入申請書の作成と提出

次のステップは従業員ごとに加入申請書を作成し、衛生福利部中央健康保険署分署の窓口へ提出することです。
衛生福利部中央健康保険署の公式HPから申請書「全民健康保險保險對象投保申報表」を入手し以下の情報を記入します。
- 被保険者の情報
- 会社情報
- 資格取得日
健保は、原則として雇用開始日から加入手続きをおこないます。
必要な箇所に会社、責任者、担当者の印鑑を押します。
提出先は、衛生福利部中央健康保険署です。
外国人従業員の場合、居留証とワークパミット(工作許可)の写しを添付して管轄地域の窓口へ提出、もしくは郵送で提出します。
4.扶養家族の加入
従業員に一定条件を満たす扶養家族がいれば、被扶養者(眷属)として会社の健保に加入させることができます。
その際には、一般的に以下の種類が必要です。
- 戸籍謄本・結婚証明書など親族関係を証明できる書類
- 扶養家族の身分証もしくは居留証
- 申請書
5.健保カードの発行

従業員が初めて健保に加入する場合、衛生福利部中央健康保険署が健保カードを発行します。
従業員の住所宛に郵送、もしくは指定の方法で受け取ることが可能です。
転職で健保に加入するケースでは、既存の健保カードを継続して使用します。
保険料の一部を負担する会社が変わるだけで、カード自体の内容やデザインは変わることはありません。
6.保険料の計算と納付

給与計算時に会社の経理部などの担当部署が各従業員の保険料を計算します。
計算には以下の情報が必要です。
- 月額保険料:全民健康保險投保金額分級表を参照
- 保険料率:2011年1月1日より5.17%に改定され、2025年もそのまま
- 負担率:会社負担は60%、従業員負担は30% 、政府10%
- 扶養家族の人数:扶養家族は何人でも加入可能。ただし、保険料は3人までしか計上しない
保険料の自己負担と会社負担の計算
例を挙げて保険料の自己負担と会社負担を計算しましょう。
例:A社に勤務するBさんは月収が40,000台湾元です。4人の扶養家族がいます。
Bさんの健保の保険料はA社が計算し、給料から天引きします。
全民健康保險投保金額分級表によるBさんの保険等級は9級で、月投保金額は40,100台湾元です。
実際の扶養者数は4人ですが、保険料の計算上は上限が3人になります。
計算式
自己負担分:
月投保金額 x 保険料率(5.17%)x 負担率 x(本人+被扶養者数)(小数点以下四捨五入)
会社負担分:
月投保金額 x 保険料率(5.17%)x 負担率 x(1+平均扶養者数)(小数点以下四捨五入)
自己負担分の計算式は、(月投保金額)×(保険料率5.17%)×(負担率30%)×(本人+被扶養者数)です。
これらのデータを踏まえて、まずはBさんが毎月自己負担する保険料を計算します。
自己負担分:40,100 × 5.17% × 30% ×(1+3)= 2,487台湾元(金額は四捨五入)
※扶養4人ですが、3人までしか計算しないので、本人と3人の扶養合わせて「4」
会社負担分の計算式は、(月投保金額)×(保険料率5.17%)×(負担率60%)×(本人+平均扶養者数0.56)を使います。
会社負担分を計算する際の扶養者数は平均扶養者数の0.56(2024年1月1日時点)を使って計算します。
したがって、自分と扶養者数を足した数は「1.56」です。
会社負担分は次のように計算できます。
会社負担分:40,100 × 5.17% × 60% ×(1+0.56)= 1,940台湾元(金額は四捨五入)
※平均扶養数は0.56人 (2024年1月1日時点)
したがって、本人負担分は約2,488元(30%)、会社負担分は約1940元(60%)となります。
注意点として、自己負担分は「現実の人数」で計算し、会社負担分は「統計平均」で計算します。
会社は毎月、従業員負担分を給料から天引きし、会社負担分と合わせて、期日ごとに衛生衛生福利部中央健康保険署へ納付します。
健保の保険料率や全民健康保險投保金額分級表は変更することがあるので、最新の情報を衛生福利部中央健康保険署の公式HPから確認してください。
7.退職時の対応

会社で健保に加入していた従業員が退職する際には、健保の脱退と離職証明書を発行します。
従業員は、会社が脱退手続きをおこなったら、保険が切れます。
退職後すぐに別の会社に移らない場合、個人で健保に加入するよう勧めてください。
他の会社に移る場合は、新しい会社が再度健保の資格取得手続きをおこないます。
全民健康保険にまつわる実務についてのまとめ
この記事では台湾の法人企業が従業員を健保に加入させるために必要な手続きについて紹介しました。
健保は台湾の法令に基づく強制加入の社会保険なので、未加入の場合は遡及加入や保険料の追徴が行われる可能性があります。
したがって、日本の企業が台湾で会社を設立する場合は、設立後できるだけ早い段階で関連手続きを進めることが重要です。
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